☆巻頭言
今日、自民党は一般に「保守政党」だと見なされている。自民党自身も自らを、常に進歩を目指す「保守政党」だと自己規定してもいる。しかし、自由民主党はそもそもLiberal Democratic Party(=リベラル・デモクラティック党)であり、党名からして保守というよりもむしろ「リベラル」政党だ。しかも民のリベラル(自由主義)的傾向が強ければ、「自由民主」という言葉は「自由自由」を意味するものとなり、ますますリベラル政党だということとなる。そう考えれば、自民党が、今もなお日本国民の内に残されている良質な伝統や文化を「保守」するどころか「破壊」する傾きを持つ新自由主義やグローバリズムや移民政策等の推進といった、保守というよりはむしろリベラルな諸方針を強力に推進し続けているのも、必然だということもできる。
この状況の中で、支持する政党を見失ってしまうこととなったのが、保守的傾向を持つ人々だ。かつて自民党は彼らの受け皿としても機能していた一方、彼らの多くが今、過剰な新自由主義の推進方針やLGBT関連法案等に反発する恰好で自民党から離れ始めている。そしていま、日本保守党や参政党、日本維新の会などの保守を標榜する新しい政党群が生まれ始めている。
ついては「危機と対峙する保守思想誌」たる本誌では、日本の政治の立て直し、そして戦後政治の超克を企図し、今日本で求められるべき「保守」政治とは一体如何なるものなのか、そして今、自民党を中心とした各種政党が標榜する「保守」というものが一体如何ほどにそこから乖離しているのかを改めて問う特集『自民党は「保守政党」なのか?』をここに編纂することとした。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
目次
【特集座談会】
・日本において「保守政治」は可能か?/吉田 徹×白井 聡×藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・自由と民主だけでは「保守政党」にあらず/伊吹文明×藤井 聡
・自民党はなぜ劣化したのか/小沢一郎×堀 茂樹×藤井 聡×柴山桂太
【特集論考】
・自民党は何を保守すべきなのか―自民党は何を保守すべきなのか/西田昌司
・保守にとっての「ヘゲモニー」の戦略/仲正昌樹
・食料・農業・農村を犠牲にして我が身を守るのは保守ではない/鈴木宣弘
・現代日本社会における保守政党と自民党/西田亮介
・「質の高い普通の人々」を生み出し続ける国づくりをめざせ!/施 光恒
【新連載】
・風土と共同体 第一回 風土再生の根本問題(一)/山口敬太
【連載】
・「危機感のない日本」の危機―東京一極集中による国家崩壊の恐怖/大石久和
・與那覇潤連続対談 在野の「知」を歩く 第2回 古典をよむのは「逆張り」ですか?(後編)/ゲスト 綿野恵太
・「農」を語る 第2回 世界に誇るべき日本の小規模農業/山極壽一×藤井 聡
・アジアの新世紀 新連載 不可視のイスラーム帝国 ユーラシアを再編する学僧たち 第1回 修行のイスラーム文化/山本直輝
・映画で語る保守思想 第11回 絶望の淵で見出す「希望」とは?―『ペパーミント・キャンディー』を題材に(中編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第三十二回 マルクスの亡霊たち―日本人の「一神教」理解の問題点④/富岡幸一郎
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評 第9回 規制改革の舞台裏/室伏謙一
・ひこばえ 風土に根ざす智慧と美徳 第二回 着物と刀―想いをまとい、美を携える―/首藤小町
・経世済民 虫の目・鳥の目 第8回(最終回) 金融教育が日本を滅ぼさないために/田内 学
・欲望の戦後音楽ディスクガイド 第10回 OKI / No One's Land/篠崎奏平
・東京ブレンバスター⑫ ミツ荒川とオッペンハイマー/但馬オサム
【巻末オピニオン】
・徳と鏡―政治改革論に足りないもの/柴山桂太
【書評】
・『ておくれの現代社会論 ○○と□□ロジー』中島啓勝 著/田中孝太郎
・『政治哲学とイデオロギー レオ・シュトラウスの政治哲学論』早瀬善彦 著/杉谷和哉
・『末裔』絲山秋子 著/橋場麻由
・『たまたま、この世界に生まれて ミラン・クンデラと運命』須藤輝彦 著/前田龍之祐
【その他】
・「戦後レジーム」と「保守本流」 岸田文雄アメリカ演説を考える(鳥兜)
・ラディカルな政治運動と結びつくスピリチュアリズム(鳥兜)
・アイデンティティの「改変」――二十一世紀の「左翼」が目指すもの(保守放談)
・無反省なまま繰り返される観光公害(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)
今、日本では、各領域において激しく進行した「腐敗」が次々と白日の下に
晒されるという異様な光景が繰り返されている。自民党の裏金問題は国民の
政治不信を極限にまで引き上げ、木原元官房副長官を巡る一連の週刊誌報道は
政治のみならず司法に対する深刻な国民不信を導いた。財務省の緊縮的態度は
もはや既にカルトと違わぬと主張する『ザイム真理教』が未曾有のベストセラー
となる程に行政不信も巨大化した。そして、ジャニー喜多川や吉本興業の
トップ芸人の性加害問題はエンタメ界の「絶対的権力」の崩壊を導いた。
今、世間ではこうした腐敗対策の必要性が叫ばれ、そのために腐敗の温床
となった組織・共同体の杓子定規な規制導入による弱体化が進められようとして
いるが、そうした表層的対策では事態は悪化する他ない。なぜなら今日の腐敗は
組織・共同体の活性化ではなく弱体化によって進行したものでしかないからだ。
ついては本誌では今、日本で進行する「腐敗」とそれに対する国民の「不信」
の構造を明らかにすることを通して、その「腐敗」を乗り越えるための方途を
探る特集をここに企画した。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
〔特集〕
不信の構造、腐敗の正体――政治・エンタメ・財務省
【特集対談】
・日本国家の腐敗をいかに乗り越えるか/亀井静香×藤井 聡
・日本を腐敗させる財務省の工作――政官業+メディアは如何に癒着しているか/須田慎一郎×藤井 聡
【特集論考】
・「戦後家族」の運命――私たちの不信と腐敗の起源をめぐって/浜崎洋介
・民主主義にとって「信頼」はなぜ重要か?/吉田 徹
・過剰な「透明性」がメディアを解体する――権力との「癒着」は腐敗なのか/松林 薫
・特権と人権の区別つかぬ自民党/佐高 信
・「木原事件」が炙り出すマスメディアの沈黙――報道機関を覆う「統制」と「横並び」/西脇亨輔
・「内なる地上波信仰」を捨てよ――ジャニーズ問題とその「腐敗の正体」/辻田真佐憲
【新連載】
・與那覇潤連続対談 在野の「知」を歩く 第1回 古典をよむのは「逆張り」ですか?(前編)/(ゲスト)綿野恵太
・ひこばえ 風土に根ざす智慧と美徳 第一回 令和に芽ぐむやまとごころ/首藤小町
【連載】
・「農」を語る 第1回 「農」から考える、文明のあるべき姿/山極壽一×藤井 聡
・映画で語る保守思想 第10回 絶望の淵で見出す「希望」とは? 『ペパーミント・キャンディー』を題材に(前編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・「危機感のない日本」の危機――どこから見ても崩壊している日本/大石久和
・アジアの新世紀 王道を以て覇道を制す――私の見た言論とその未来/大場一央
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第三十一回 マルクスの亡霊たち 日本人の「一神教」理解の問題点③/富岡幸一郎
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評 第8回 国家の役割を取り戻せ!(後編) 民間委託の推進は本当にいいことなのか? 室伏謙一
・経世済民 虫の目・鳥の目 第7回 将来のハイパーインフレに備えるべきこと/田内 学
・欲望の戦後音楽ディスクガイド 第9回 Sun Ra / Space Is the Place/篠崎奏平
・東京ブレンバスター⑪ 同情闘争は始まっている/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 令和六年二月~三月/藤井 聡
【巻末オピニオン】
・「嘘」に塗れた日銀利上げ――腐敗を糺さんがために、不信の目を持つべし/藤井 聡
【書評】
・『嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する』山本圭 著/前田龍之祐
・『日本哲学入門』藤田正勝 著/粕谷文昭
・『他人の家』ソン・ウォンピョン 著/橋場麻由
・『キェルケゴール 生の苦悩に向き合う哲学』鈴木祐丞 著/前田一樹
・『一神教と帝国』内田 樹、中田 考、山本直輝 著/冨永晃輝
【その他】
・挽肉は傷みやすい/吉田真澄(寄稿)
・保護主義への準備を(鳥兜)
・なぜデフレ脱却、憲法改正、近代の超克が必要なのか?(鳥兜)
・観念に囚われた病人――滅ぶ日本の必然(保守放談)
・大阪万博の行き詰まりが象徴するもの(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)
我が国の国家的凋落は今やもう、尋常でない水準に達している。そしてその凋落を導いていると言われるデフレや少子高齢化等の諸問題のさらに背景に存在しているのが、社会、経済を支える下部構造「インフラストラクチャー」、すなわち「インフラ」に対する国民的無関心だ。
我々の社会・経済活動は、全て交通、防災、資源、食料に関する各種インフラの「上」で展開されるものである以上、その下部のインフラが劣化すれば必然的に劣化する。それ故、弱肉強食の競争に晒されている世界各国は可能な限りのインフラ投資に勤しんでいる。ところが現在我が国においてだけはインフラ投資が著しく滞り、その必然的帰結として衰退の一途を辿るようになってしまった。
それにも拘わらず、日本の学界や政界、言論空間の「インフラ」に対する無関心は常軌を逸した水準に達している。かくしてこのインフラに対する国民的無関心こそが、日本国家の激しい凋落の元凶なのだ。
ついては本誌では、総合的な状況認識に基づく大局的かつ個別具体的なインフラ論を基軸とした地域再生、国家再生プロジェクトを探求する実学的思想を巡る特集「日本を救うインフラ論」を企画する。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
〔特集〕
日本を救うインフラ論――今、真に必要な思想
【特集座談会】
・「インフラ論」なくして政治は語れず/脇 雅史×西田昌司×藤井 聡
・インフラ論で日本は「明るく」なる/白水靖郎×藤井 聡×浜崎洋介
【特集インタビュー】
・「水道老朽化」と「水不足」に危機感を持て/橋本淳司
【特集論考】
・国土計画と産業政策――戦後体制の最良の部分を蘇らせよ/柴山桂太
・緊縮財政論がインフラを蝕む――貧困化の道を突き進む日本/大石久和
・流域共同体の誕生、崩壊そして再生――分散社会へのインフラ投資/竹村公太郎
・理念・理想なきインフラ政策が導く未来/佐々木邦明
・インフラを語ることは、将来の日本と社会のあり方そのものを語ることである/小池淳司
・阪急沿線開発事業にみられる小林一三の思想――真に豊かな国家とは/星山京子
・宮本常一のインフラ論――地方の孤立を救う道路啓開論/中尾聡史
・土木バッシング世論の「黒幕」/田中皓介
・「毒」のある意志――日本人の苦手なインフラ思考/川端祐一郎
【特別座談会】
・アカデミズムとジャーナリズムの連携を探る――学術誌『実践政策学』がめざすもの(後編)/石田東生×桑子敏雄×森栗茂一×藤井 聡
【連載】
・「アジアの新世紀」
中国化の先に来た「リストカット化する日本」(後編)/與那覇 潤(聞き手 浜崎洋介)
危機と好機 安岡正篤の場合(最終回) 日本主義がつくる「アジアの新世紀」/大場一央
台湾・金門島から考える、東アジアの安定とは/田中孝太郎
・「危機感のない日本」の危機 経営者による日本破壊/大石久和
・「農」を語る(第3回)有機農業は日本再生の第一歩である/松原隆一郎×藤井 聡
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー(第三十回)マルクスの亡霊たち 日本人の「一神教」理解の問題点②/富岡幸一郎
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評(第7回)公共事業悪玉論が日本を自然災害に対して脆弱にした――「財政余力」ではなく「国土強靭化余力」の形成を/室伏謙一
・映画で語る保守思想(第9回)戦争が呼び覚ます「運命」の感覚――『ひまわり』を題材に(後編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・経世済民 虫の目・鳥の目(第6回)お金の蓄積が将来の備えにならない当然の理由/田内 学
・欲望の戦後音楽ディスクガイド(第8回)Beck / Mellow Gold/篠崎奏平
・東京ブレンバスター⑩ 日本的ダサさが世界をリードする――アバンギャルディ、没個性の個性/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 令和五年十二月~令和六年一月/藤井 聡
【巻末オピニオン】
・平和的であれ、暴力的であれ/川端祐一郎
【書評】
・『訂正可能性の哲学』東 浩紀 著/粕谷文昭
・『きみのお金は誰のため』田内 学 著/小野耕資
・『「逆張り」の研究』綿野恵太 著/前田龍之祐
・『食客論』星野 太 著/橋場麻由
【その他】
・(第六回)表現者賞発表
・正統(ショウトウ)とは何か/前田健太郎(寄稿)
・「政治」を失った社会――敗けてしまった国の末路(鳥兜)
・世界を動かす「ありがた迷惑」な思想(鳥兜)
・不確定事実に対する「知らんけど」批判による常識強化(保守放談)
・派閥は保守政治の宿命(保守放談)
・キャンセルカルチャーとしての「派閥解散」(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)
今の日本の政治の腐敗は著しい。一旦政治権力を掌握すると司法を平然と歪めて
“しら”を切り通す程に、我が国中枢は腐敗してしまった。
こうなった背景にあるのが日本における「宗教性の喪失」だ。
戦後日本では公の場で宗教を語ることそれ自体がタブーとなり、政治においては
「政教分離」の趣旨がはき違えられ、政治の現場から宗教性が蒸発し続けた。結果、
あらゆる公正・正義が蔑ろにされるに至っている。
その結果、逆説的にも生み出されたのが統一教会問題であり、虚偽の言説を脅迫に
基づいて信者に強要し続けるカルトの様な緊縮財政派の権力中枢における横暴問題、
いわゆる「ザイム真理教」問題だ。
こうした悲劇的状況から我が国を救い出すには、諸外国と同様に、そしてかつての
日本の様に、適切なかたちで適切な宗教“性”の復活を試みる他ないのではないか
――それが本特集「『政治と宗教』を問う」の趣旨である。本特集が我が国における
適切な宗教性の復活に僅かなりとも貢献せんことを、祈念したい。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
〔特集〕
「政治と宗教」を問う――神道・仏教からザイム真理教まで
【特集座談会】
・日本人よ、自らの“宗教性”を自覚せよ/島薗 進×施 光恒×藤井 聡×柴山桂太
【特集インタビュー】
・ザイム真理教という「カルト」による国家破壊/森永卓郎(聞き手 藤井 聡)
・イスラーム法学者に聞く、「文明」の生命力と「一神教」の理念/中田 考(聞き手 川端祐一郎)
【特集論考】
・大衆的な、あまりに大衆的な――「信仰」なき現代を問う/浜崎洋介
・どうして「宗教」に接するのを恐れるのか/仲正昌樹
・福音派はなぜ政治を動かせるのか――アメリカの「政教分離」が意味するもの/会田弘継
・人は宗教を欠いて戦争を扱い得るか/小幡 敏
・仏国土思想から見た日本の国体――その成立と展開/金子宗德
・神道指令による「日本人」の解体/富岡幸一郎
【特別座談会】
・アカデミズムとジャーナリズムの連携を探る――学術誌『実践政策学』がめざすもの(前編)/石田東生×桑子敏雄×森栗茂一×藤井 聡
・ウィトゲンシュタインと「言葉の魂」をめぐって(後編)/古田徹也×藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
【連載】
・「アジアの新世紀」
中国化の先に来た「リストカット化する日本」(前編)/與那覇 潤(聞き手 浜崎洋介)
危機と好機 安岡正篤の場合(第二回)権藤成卿と安岡正篤/大場一央
・「危機感のない日本」の危機 安全保障と日本人/大石久和
・「農」を語る(第2回)有機農業をめぐる、外圧・グローバル企業とのせめぎ合い/松原隆一郎×藤井 聡
・経世済民 虫の目・鳥の目(第5回)今さら聞けない金利と通貨の話/田内 学
・映画で語る保守思想(第8回)戦争が呼び覚ます「運命」の感覚――『ひまわり』を題材に(中編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評(第6回)国家の役割を取り戻せ!(前編)国家機能の溶解を防ぐことはできるか?/室伏謙一
・逆張りのメディア論33 「次のジャニーズ事件」防止に必要なもの/松林 薫
・欲望の戦後音楽ディスクガイド(第7回)The Rolling Stones / Hackney Diamonds/篠崎奏平
・東京ブレンバスター9 風に吹かれて――戦争の本質/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 令和五年十月~十一月/藤井 聡
【巻末オピニオン】
・近代日本人の「信仰」を問う 大岡昇平の「襲撃」をめぐって 浜崎洋介
【書評】
・『謝罪論 謝るとは何をすることなのか』古田徹也 著/粕谷文昭
・『隣国の発見 日韓併合期に日本人は何を見たか』鄭 大均 著/小野耕資
・『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』伊藤亜紗 著/前田龍之祐
・『ユダヤ人の自己憎悪』テオドール・レッシング 著/橋場麻由
・『歴史から学ぶ比較政治制度論 日英米仏豪』小堀眞裕 著/早瀬善彦
【その他】
・無形の霊性――横山大観の絵を見て/首藤小町(寄稿)
・アメリカありきの経済安保(鳥兜)
・二〇二四年問題という“馬鹿ばなし”(鳥兜)
・新興宗教との関わり方も「国民の伝統」に基づくべし(保守放談)
・なぜグローバリストは未熟に見えるのか?(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)
我々にとってなくてはならない「医療」。しかし、それが「過剰」な水準に達した場合、
逆説的にも我々に様々な「被害」がもたらされることになる。薬の過剰摂取は体に毒で
あるし、健康に配慮しすぎて味気ない暮らしになれば我々の幸福が大きく棄損する。
さらには過剰医療が加速すれば、医療費の肥大化に恐れをなした政府が過度に緊縮的に
なり、その結果経済が疲弊していくということにもなる。
こうした過剰医療の背後にあるのが生命至上主義という名のニヒリズム(虚無主義)だ。
このニヒリズムと拝金主義者が結託し、生命至上主義を言い訳にして過剰医療を加速させ
つつ効率的に患者達と政府から大量のマネーを吸い上げ続けるという詐称的システムが、
今の日本の医療界において構築されてしまっている。
本特集では、こうした状況はもはや「病院文明」と呼ぶに相応しいものに堕落した
文明状況であることを描写しつつ、そこで横行する過剰医療の恐るべき不条理を明らかに
すると共に、その超克の術を考える。
表現者クライテリオン編集長 藤井聡
【特集】
「過剰医療」の構造――病院文明のニヒリズム
【特集座談会】
・生を蝕む「病院文明」に抗うために/森田洋之×大脇幸志郎×藤井 聡
【特集論考】
・人間のための医療か、医療のための人間なのか?――「過剰医療」批判序説/浜崎洋介
・ウイルス学者から見たコロナ対策の異常さ/宮沢孝幸
・なぜ秀才たちは鬼化して人間を喰うのか――HPVワクチン接種被害とそれへの一部フェミニストの加担を問う/井上芳保
・セキュリティ技術が支配する社会――生活に浸透する“生政治”/美馬達哉
・〈自己の死〉と向き合わなければ医療は腐敗する――薬学倫理の視点から見える「致命的な欠点」/松島哲久
・医療を蝕む「利益第一」主義の実態――ベテラン医師がその諸相を描く/武久洋三
・近代医療は人を幸せにするのか/木村盛世
・過剰医療研究をより良い医療に生かすために/冨永晃輝
【特別座談会】
ウィトゲンシュタインと「言葉の魂」をめぐって(前編)/古田徹也×藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
【連載】
・「農」を語る 第1回 有機農業の意義を問い直す/松原隆一郎×藤井 聡
・映画で語る保守思想 第7回 戦争が呼び覚ます「運命」の感覚――『ひまわり』を題材に(前編)/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・「アジアの新世紀」
〔企画始動記念座談会〕保守から考えるアジアの近代――福田恆存の「韓国論」を手がかりに(第三回)「保守的アジア主義」を目指せ/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
危機と好機 安岡正篤の場合(第一回)近代日本の矛盾/大場一央
・「危機感のない日本」の危機 「超」がつくほどに無知で無能な政治が続く/大石久和
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー第二十九回 マルクスの亡霊たち 日本人の「一神教」理解の問題点/富岡幸一郎
・経世済民 虫の目・鳥の目 第4回「貯蓄から投資へ」お金を回すだけでは経済は成長しない/田内 学
・徹底検証! 霞が関の舞台裏 脱藩官僚による官僚批評 第5回 政治の役割を再認識せよ――政治が決断すれば霞が関はこれに従う/室伏謙一
・逆張りのメディア論32 新聞記者に足りないのは営業経験だ/松林 薫
・欲望の戦後音楽ディスクガイド 第6回 Radiohead / Kid A/篠崎奏平
・東京ブレンバスター8 バルタン星人と?陀多 現代移民考/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 令和五年八月~九月/藤井 聡
【巻末オピニオン】
・米中対立は「新しい冷戦」ではない/柴山桂太
【書評】
・『武器としての「中国思想」』大場一央 著/小野耕資
・『戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで』境家史郎 著/前田龍之祐
・『ニホンという病』養老孟司・名越康文 著/篠崎奏平
・『「経済成長」の起源 豊かな国、停滞する国、貧しい国』マーク・コヤマ、ジャレド・ルービン 著/早瀬善彦
・『ハチのいない蜂飼い』西村玲子 著/橋場麻由
【その他】
・深刻化する下請収奪の問題/高平伸暁(寄稿)
・太古の知を訪う/首藤小町(寄稿)
・「運命」を取り戻すために――産業技術社会の「まやかし」に抗して(鳥兜)
・脅威を「忘れる」ことの価値(鳥兜)
・ジャニー喜多川の「性犯罪」――「全き被害者」などいるのか(保守放談)
・株価より賃上げを(保守放談)
・悲観と楽観に二極化する「原発」論議(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)
☆【特集】インフレは悪くない、悪いのは「低賃金」だ!
☆【特集座談会】
・「健全なインフレ」に向けた戦略論――自由民主党・西田昌司、城内実両氏に聞く/西田昌司×城内 実×藤井 聡
☆【特集対談】あらためて「貨幣の【謎★ニシン】」を考える
・第一部 講義編 現代貨幣理論(MMT)には何が見えていないのか?/大澤真幸
・第二部 対談編 貨幣と資本主義をめぐって/大澤真幸×柴山桂太
☆【特集対談】
・「政府による貨幣発行」、その思想の原点を探る――前明石市長・泉房穂が語る「民のための政治」/泉 房穂×藤井 聡
☆【特集論考】
・債務国家とインフレの政治学/柴山桂太
・宵越しの銭を持たぬために――「デフレ脱却」の思想/浜崎洋介
・増えた税収は国民に還元せよ――実質賃金減少を招く元凶は緊縮財政/田村秀男
・岸田政権は金融緩和と積極財政のポリシーミックスを継続できるか/会田卓司
・羊頭を掲げて狗肉を売る政権/森永康平
・日本再生の障害は自民党である/鈴木傾城
・財務省が仕掛けた「一〇〇〇億円縛り」の罠――「骨太の方針」を巡る攻防を読み解く/須田慎一郎
☆【アジアの新世紀】
・新連載「アジアの新世紀」企画始動記念座談会 保守から考えるアジアの近代 福田恆存の「韓国論」を手がかりに
・第二回 アジアの過剰な「適応」と「反発」/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・拝啓 王毅・中国共産党中央政治局委員殿――二つのアジア主義の峻別を/坪内隆彦