

【特集】
「寛容」という暴力
あるいは健全な自文化中心主義の擁護
【巻頭言】
「多様性」や「寛容」という言葉がドグマとして蔓延した現在の言論空間において、移民増加等に向けられる生活実感に根ざした感情は「排外主義」というレッテルによって抑圧されている。
しかし、人類は具体的な共同体の中で生きることが運命づけられており、その共同体によって育まれた価値体系の中で世界を見、ものを考え、幸福を感じ、善悪を判断する。ゆえに、その価値体系を根本的に突き崩そうとするものが現れた時、それに抵抗しようとするのは人間の自然なる防衛本能である。
もちろん、既存の価値体系は完全に閉じられたものではない。新奇なもの、異質なものとの出会いを、ただ恐れるだけでなく喜んで迎え入れ、自らを変容させていくこともまた自然の心性である。だからこそ、私たちは何を迎え入れ、何を拒むべきか、いま厳しく問われているのはその境界のクライテリオン(=規準)である。
どこまでも曖昧に移民を受け入れ、境界を溶解させていく政府の態度は、自己の輪郭を失い、自他の区別を截然とできなくなった日本人の精神の反映に他ならない。本誌はこの困難な時代にあらためて「寛容」や「排外主義」といった言葉の再定義を試みる。そして、人々の声なき不安を生活者の権利としてすくい上げ、「健全な自文化中心主義」をどの文化も当然に持つべき態度として提示する議論を展開することとした。
表現者クライテリオン編集部
【特集座談会】
移民受け入れの規準は「日本文化」にあり/施 光恒×大場一央×辻田真佐憲×浜崎洋介
【特集論考】
・不寛容なくして寛容なし 歴史を貫く寛容のパラドックス/森本あんり
・日本で「統合政策」は可能なのか/川端祐一郎
・「神国日本」が拒絶したもの/三浦小太郎
・共同体の境界設定と共存の作法/中田 考
・受託の責務としてのナショナリズム 「責任亡き寛容」の暴力を越えて/白川俊介
・レッテルが言論を閉ざすとき 「寛容」はなぜ排除へと反転するのか/佐藤慶治
【小特集】
「皇室典範改正」議論の空虚
皇室典範改正を巡って様々な議論が交わされている。しかし、政治家や知識人の間には、あまりにも「急遽な議論」が跋扈している。国家の根幹や死生観に関わる次元の重さを忘れ、日本はどうしようもないほどに空っぽな国になってしまった。本特集では、そうした現代の空虚な言説と対峙すべく、新田均、片山杜秀の両氏を迎え、インタビューを敢行した。今、我々に求められている覚悟を糺す。
インタビュー(1) 覚醒か、日本の滅亡か 熱量なき改正は皇室を破壊する/片山杜秀
インタビュー(2) 令和の正統論と保守派が持つべき覚悟/新田 均
【特別座談会】
追悼 桶谷秀昭 孤高の思想家は何を遺したか/新保祐司×山本直人×小野耕資富岡幸一郎
【連載】
・覆面座談会流行思想解剖 第1回 國分功一郎の確かな「敗北」について『天皇への敗北』を読む
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第415回 世界潮流の中の日本 憲法九条はどこへゆく/富岡幸一郎
・満洲こぼれ話 第7回 平民列伝(1)/小幡 敏
・戦後精神史入門 序 再び見出された「現実」のために/浜崎洋介
・「農」を語る 第1回「武」に通ずる「農」/荒谷 卓×小野耕資
・儒学者たちの実存と実像(1) 孔子「門弟三千」の孤独としくじり/大場一央
・考える機械を考える 第1回 「考える機械」は本当に考えているのか/川端祐一郎
【巻末オピニオン】
・「極」の擁護/柴山桂太
【巻末コラム】
・伊藤貫のワシントン・ラプソディ「アメリカによる世界一極化」という妄想/伊藤 貫
・非国民のすゝめ 秩序は嘲笑すべし/小幡 敏
・読者の皆様へ
【書評】
・『公と私』 溝口雄三 著/粕谷文昭
・『日本の自然葬 風葬・土葬から樹木葬・循環葬まで』高橋繁行 著/小野耕資
・『昼間のスターゲイザー 占いと心理学の対話』鏡リュウジ、東畑開人 著/山田陣之祐
・『宣長とベルクソン』前田英樹 著/髙橋直也
【その他】
バックナンバー
執筆者紹介・編集後記
保守放談
政治家を政策で判断する勿れ
皇室典範改正報道に見るメディアの「ニヒリズム」
読者からの手紙
塾生のページ

【特集1】
アメリカが世界を破壊する
【巻頭言】
トランプを一言で形容すれば、やはり「殺し屋」ということになるだろう。「相互関税」によって国際自由貿易の時代に終止符を打ち、軍事負担を増やせという要求に応じたNATO加盟国は、軍事費をGDPの5%にまで増やすことで合意した。そして、現下のイラン戦争である。事前の通告も、関係国への丁寧な根回しもなく、いきなり空爆して指導層を排除する。国際秩序は過去のさまざまな合意の積み重ねで成り立っているが、トランプはそれを一気に破壊しようとしている。
背景には、このままではアメリカの衰退を止められないという危機感があるのだろう。だが、旧秩序を強引に新秩序に転換させようというのは、失敗の可能性がきわめて高いギャンブルである。果たしてトランプは何を目指しているのか。イランの側は、どのような原理でアメリカと対峙しようとしているのか。イラン戦争をめぐるさまざまな論点を掘り下げながら、世界と日本の将来を考える。
ただし政治勢力としてのリベラル派の衰退は、思想やイデオロギーの衰退を必ずしも意味しない。むしろ価値観調査では、若年層ほどリベラルな価値観を自然に身につけていることが分かっている。近代初期から社会改革の根本理念であり続けてきた「自由」や「平等」は、現代人にとっては今や空気のように自明であるが、そのことでかえってイデオロギー化し、狭い支持者の間で教条化してしまっているようにも見える。
表現者クライテリオン編集委員 柴山桂太
【特集座談会】
・アメリカはどんな「世界」を目指すのか/施 光恒×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
【特集論考】
・「海」の帝国と「陸」の抵抗 トランプ主義の先に待つ大空位時代/柴山桂太
・アメリカの無理解と市民宗教の消失/森本あんり
・宗教地政学から読み解くイラン・アメリカ戦争の意味/中田 考
・アメリカの暴力性について/会田弘継
・不滅のイラン、来るべき哲学の革命に向けて/安藤礼二
・保守の隷従、リベラルの屈従/白井 聡
・ワシントンはリベラル主義を武器にして世界を破壊した/ジェイソン・モーガン
【特集2】
さらば、「平成保守」!
【特集論考】
・人格と教養 令和の保守に残された宿題/川端祐一郎
・わが体験的「平成保守史」/辻田真佐憲
・「言論の空疎化」に保守はどう向き合うべきか 対米自立を“軸”として/梶原麻衣子
・「活字による社交」はどこへ消えたか/中村雅和
・「揺りかご」を壊すとき/藤井雄太
【連載】
・與那覇潤〈連続対談〉在野の「知」を歩く 第10回 「心」を語らない臨床の半世紀(後編)/ゲスト:信田さよこ
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第414回 世界潮流の中の日本/富岡幸一郎
・満洲こぼれ話 第6回 “戦争を見る眼”と敗戦前後/小幡 敏
・「農」を語る 第2回 「農」の課題を映画で描く(後編)/なるせゆうせい×藤井 聡
・「過剰医療」の構造と「適正な医療」のかたち 第12回「透析医療」の闇 病院の都合で奪われる患者の自由/森田洋之
・日本のアンチモダン 第11回 東洋的豪傑(2)西部死すとも、保守は死せず『保守のコスモロジー』をめぐる真我のありか/平坂純一
・東京ブレンバスター(24) 彼女がスニーカーに履き替えたら れいわ新選組とは何だったのか/但馬オサム
・リレー連載 映画とわたし 第8回 逆噴射家族 小林よしのり「風刺する精神」/平坂純一
【寄稿】
・古流剣術から学ぶ生きる知恵 令和の時代の武士道の実践/脇 拓也
【巻末オピニオン】
・変貌する「アメリカ」 自由の限界について/浜崎洋介
【書評】
・『コンサルの正体 国家を蝕む黒幕たち』マリアナ・マッツカート、ロージー・コリントン 著/田中孝太郎
・『キリスト教ナショナリズム 不穏なアメリカの変貌』森本あんり、渡辺靖 著/粕谷文昭
・『保守のコスモロジー』 富岡幸一郎 著/小野耕資
・『ロシア宇宙主義全史 神化思想からトランスヒューマニズム・人新世へ』 乗松享平 著/山田陣之祐
・『天皇への敗北 シリーズ哲学講話』 國分功一郎 著/髙橋直也
【その他】
・キリスト教ナショナリズムの誤謬 その「政教一致」が意味するもの/「メンパ」の時代 スマホから逃げ始めた若者たち(鳥兜)
・読者の皆様へ 雑誌運動の継承と刷新
・第8回 表現者賞・奨励賞・読者賞 発表
・資本主義的な、あまりに資本主義的な/三度目の「大阪都構想」という暴挙/「正解中毒」に陥るな/「常識」よりAIを信じる若者──歯止めを失った社会の末路(保守放談)
・バックナンバー
・執筆者紹介/編集後記
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)

【特集】
リベラルの終焉
ここから始まる“自由”の再生
【巻頭言】
自民党で岸田・石破路線が不人気となり、今年2月の総選挙では立憲民主党と公明党が合流した「中道改革連合」が未曾有の大敗を喫した。これは人々の間で、リベラル離れが加速していることを意味している。
日本だけの現象ではない。アメリカのトランプ現象に代表される現代のポピュリズムは、主に右派によって主導されている。行きすぎたグローバル化や経済格差の是正は、左派も主張しているのに、有権者に選ばれていないのである。
ただし政治勢力としてのリベラル派の衰退は、思想やイデオロギーの衰退を必ずしも意味しない。むしろ価値観調査では、若年層ほどリベラルな価値観を自然に身につけていることが分かっている。近代初期から社会改革の根本理念であり続けてきた「自由」や「平等」は、現代人にとっては今や空気のように自明であるが、そのことでかえってイデオロギー化し、狭い支持者の間で教条化してしまっているようにも見える。
保守の立場からリベラルを一方的に断罪するつもりはない。ただ、既存のリベラルの限界を政治的立場の違いを超えて議論することで、「真の自由」が再生するための条件を考えたいというのが、今号の特集の趣旨である。
表現者クライテリオン編集委員 柴山桂太
【特集対談】
・新しい政治哲学は地方から生まれる/東 浩紀×藤井 聡
【特集鼎談】
・「自由」から自由になる原理/辻田真佐憲×柴山桂太×浜崎洋介
【特集論考】
・「リベラリズム」とは、所詮、奴隷の思想ではないのか/浜崎洋介
・アメリカにおいて「リベラル」は何を意味するか/会田弘継
・根無し草な日本の“リベラル”/仲正昌樹
・「リベラルの敗北」は本当か/吉田 徹
・リベラリズムの終焉?/小泉 悠
・リベラルの自己破壊と「われわれ」の再建/白川俊介
・現代リベラルの根本問題/白井 聡
【特別寄稿】
・地経学元年のイラン帝国の挑戦(前編)/中田 考
【特別対談】
・モデリスト紫山登光に聞く(後編) 徒弟制が技術を伝承する/聞き手 紫山桂太
【連載】
・「危機感のない日本」の危機 無策怠慢の集合体・関東大震災の再来への備え/大石久和
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第413回 世界潮流の中の日本/富岡幸一郎
・満洲こぼれ話 第5回 敗戦の民族(2)/小幡 敏
・不可視のイスラーム帝国ユーラシアを再編する学僧たち 第6回 ルドアンとイスラーム政治/山本直輝
・與那覇潤〈連続対談〉在野の「知」を歩く 第9回 「心」を語らない臨床の半世紀(前編)/ゲスト:信田さよこ
・「過剰医療」の構造と「適正な医療」のかたち 第11回 「小児科医療」の闇/森田洋之
・英国便り 日本の皆様へ 少子化と移民の因果関係 第3回〈最終回〉 英国でよく働き、たっぷり納税し、そして夢が叶った/高尾慶子
・日本のアンチモダン 第10回 東洋的豪傑(1)アンチモダンの恋愛論/平坂純一
・「農」を語る 第1回 「農」の課題を映画で描く/なるせゆうせい×藤井 聡
・東京ブレンバスター(23) コンと呼ばれぬように/但馬オサム
・リレー連載 映画とわたし 第7回 奇跡 「奇跡」の驚き/富岡幸一郎
【寄稿】
・堆積する時間の中で 『ダウントン・アビー』に見る英国文化の再編/佐藤慶治
【巻末オピニオン】
・覇権国の断末魔 イラン戦争にみる規範の蒸発/柴山桂太
【書評】
・『自由民主主義とは何か』 田中拓道 著/粕谷文昭
・『アメリカ帝国の衰亡と日本の窮地』 伊藤 貫、ジェイソン・モーガン 著/小野耕資
・『純粋哲学の世界 六つの基本問題をめぐる哲学入門』 高村友也 著/山田陣之祐
・『日本政治思想史講義 『丸山眞男講義録 第四冊』を精読する』 飯田泰三 著/髙橋直也
【その他】
・戦後レジームからノーレジームへ/幻想の帳が落ちるとき ホルムズ危機に寄せて(鳥兜)
・読者の皆様へ
・第8回 表現者賞・奨励賞・読者賞 発表
・「保守思想」に辿り着けないアメリカ/象徴と自由──国旗損壊をめぐる法の一貫性/「聖戦」化されるイラン攻撃/デジタル麻薬としてのSNS(保守放談)
・バックナンバー
・執筆者紹介/編集後記
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)

【特集】
「中国の限界」は幻か?
その強さの裏にある“歪み”
【巻頭言】
日本の論壇では長らく「中国崩壊論」が消費されてきた。しかし、かの国はこの間に経済・軍事面で飛躍的な進歩を遂げ、米国一強の世界秩序に楔を打つ存在にまで成長した。欧米の一部では「中華未来主義」なる言葉さえ囁かれ、「権威主義」はリベラル体制の閉塞感を打ち破る甘い誘惑の響きさえ持ち始めている。
一方で、二桁を誇った名目成長率は4%程度にまで下落。国力の源泉たる人口は減少に転じ、不動産バブルも崩壊した。若年失業率は二割に迫り、消費も低迷するなど、いよいよ「限界」の兆候を見せ始めているように見える。果たして此度の「中国の限界」論は、現実に即したものなのか。
トランプ復活で国際環境が激変し、日本の自立的外交が問われる今、我々に真に求められるのは、単なる「嫌中」「媚中」や安易な「願望」としての限界論を排し、冷徹な現実を見つめるリアリズムの知性である。
こうした認識の下、本特集では、中国の「強さ」とその背後に潜む経済・社会・地政学・思想・文明的な「限界」の実相を見極めんと、徹底的かつ多面的に論ずることとした。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
【特集座談会】
・中国の「膨張」にどう向き合うべきか?/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
【特集論考】
・眠れる獅子は永遠に目を覚まさない/大場一央
・間違いだらけの“中国崩壊論” 現実乖離した中国論を正す/遠藤 誉
・「中所得国の罠」を突破できるか 中国の長期衰退について/髙橋洋一
・長期停滞する習近平主席の中国/近藤大介
・限界に来た中国膨張 迫るトランプ政権の圧力/田村秀男
・高市政権への威圧は「前哨戦」か 経済の論理が動かす対日強硬姿勢/高口康太
【文学座談会】
・「中国」とはいかなる国か? 孫文『三民主義』、魯迅『阿Q正伝』を読む/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
【特別対談】
・モデリスト紫山登光に聞く(後編) 徒弟制が技術を伝承する/聞き手 紫山桂太
【特別書評】
・江藤淳『保守とはなにか』「失われた30年」の起源にあった光景/浜崎洋介
【連載】
・「危機感のない日本」の危機 亡国の財政制度等審議会/大石久和
・フィリピン旅行記 巨大都市マニラの混沌と欲望、そして希望/田中孝太郎
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第412回 世界潮流の中の日本/富岡幸一郎
・満洲こぼれ話 第4回 敗戦の民族(1)/小幡 敏
・「過剰医療」の構造と「適正な医療」のかたち 第10回 「産科医不足」の噓/森田洋之
・英国便り 日本の皆様へ 少子化と移民の因果関係 第2回 日本の政治家は本当に少子化を憂えているのですか?/高尾慶子
・日本のアンチモダン 第9回 反啓蒙思想(1)反近代としての近代主義者 福田恆存とニーチェについて/平坂純一
・「農」を語る 第3回 農を犠牲にした日本国家の末路/久保田治己×藤井 聡
・編集長クライテリア日記 令和7年12月~令和8年1月/藤井 聡
・リレー連載 映画とわたし 第6回 モンスター:エド・ゲインの物語 正気は異常を通して保たれる/藤井 聡
・東京ブレンバスター22 パンダとインドゾウ 動物外交の闇と光/但馬オサム
【寄稿】
・平坂純一『最後の異端者』を読みて/火野佑亮
【巻末オピニオン】
・人間をリアリティに連れ戻す「情報化」の逆説/川端祐一郎
【書評】
・『「酔っぱらい」たちの日本近代 酒とアルコールの社会史』 右田裕規 著/小野耕資
・『サッチャー 「鉄の女」の実像』 池本大輔 著/山田陣之祐
・『すごい古典入門 ルソー『社会契約論』 民主主義をまだ信じていいの?』 宇野重規 著/粕谷文昭
・『守破離の思想 初心から成就へ』西平 直 著/髙橋直也
【その他】
・中国という「他者」と向き合うために/台湾に学ぶ「グレーゾーン行為」の可視化(鳥兜)
・「責任ある積極財政」の本質は財政の“軛”撤廃にあり/円安は「日本売り」が原因ではない/ダボス会議において、「自国第一主義」の時代を思う(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)

【特集】
「高市現象」の正体―ここから始まる大転換
【巻頭言】
「責任ある積極財政」を掲げる自民・維新連立による「高市政権」が誕生した。この政権誕生を予期できた者はほんの数年前までは「皆無」であり、国会の権力構造を考えれば高市政権は「絶対無理」と言い得る幻の如きものだった。にも関わらず高市政権が現実に誕生したのは偏に国民がそれを希求したからだ。
結果、高市政権は極めて高い支持率で滑り出したのだが、この「高市現象」とでも言うべき社会現象は、財務省解体デモやオールドメディア批判の全国的広がり、近年の国政選挙における参政党や国民民主党の躍進の流れにあると共に、世界的に広がる「反移民運動」の潮流とも軌を一にしている。しかも21世紀に入ってからのブレグジットやトランプ大統領の誕生、欧州各国の保守政党の躍進とも通底する。
かくしてこの「高市現象」は日本、そして世界の「大転換」を暗示する重大な意味を持ち得るのではないかとの思想的予感の下、本誌では日本と世界の未来を占うべく、政治家「高市早苗」と日本国民の集合的無意識の双方を見据えつつ「高市現象の正体」を多面的に論ずることとした。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
【特集座談会】
・「真のポピュリズム」へ昇華せよ/藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
【特集インタビュー】
・高市政権は日本をどう変えるか 経済、外交、インテリジェンスの構想/小林鷹之(聞き手 藤井 聡)
・予算編成の「大転換」に挑む 「責任ある積極財政」への道のり/中村裕之(聞き手 藤井 聡)
【特集論考】
・戦略的介入主義の時代 高市現象が示す日本政治の転換/柴山桂太
・高市政権に期待する大転換 「国壊し」思想との決別/施 光恒
・高市経済政策成功の条件 PB黒字化目標は無用だ/田村秀男
・高市新政権の経済政策 成長こそ「サナエノミクス」の本質/本田悦朗
・高市政権に期待する外交上の大転換 「岸破外交」の愚からどう脱却するか/山上信吾
・新政権を待ち受ける大転換期の世界/橋本由美
・「民意」と「諫言」 高市総理が「戦後」をひっくり返すために/大場一央
【特別対談】
・モデリスト柴山登光氏に聞く(前編) 既製服に息づく職人の技術/柴山登光×柴山桂太
【連載】
・「危機感のない日本」の危機 肝心なことほど先送りして貧困化した唯一のG7国/大石久和
・アジアの新世紀 不可視のイスラーム帝国 ユーラシアを再編する学僧たち 第5回 アメリカ政治を揺さぶるポストコロニアル思想 新NY市長ゾーランの父マフムード・マムダニ/山本直輝
・アジアの新世紀 虚像の果ての中国 第4回(最終回) なぜ中国は「大国」たりえないのか? 一帯一路の真実/高口康太
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第411回 マルクスの亡霊たち 日本人の「一神教」理解の問題点(12)/富岡幸一郎
・満洲こぼれ話 第3回 民族としての歩き方/小幡 敏
・「過剰医療」の構造と「適正な医療」のかたち 第9回 「社会的共通資本」としての医療/森田洋之
・「農」を語る 第2回 農業の公的役割に目を向けよ/久保田治己×藤井 聡
・英国便り 日本の皆様へ 少子化と移民の因果関係 第1回 移民が少なく、ゆったりして平和な英国が好きだった/高尾慶子
・日本のアンチモダン 第8回 反革命(3) パリ・コミューンと自由民権運動 ルナンと諭吉の憂鬱/平坂純一
・編集長クライテリア日記 令和7年10月~11月/藤井 聡
・リレー連載 映画とわたし 第5回 ムルデカ17805 “分からぬもの”に触れる経験/小幡 敏
・東京ブレンバスター21 ハリマオからASEAN28へ/但馬オサム
【寄稿】
・失われた「強さ」と「健全さ」を求めて 陸上自衛隊体験入隊記/田中孝太郎
・大量移民受け入れによる社会・文化的リスクについての考察 ドイツの事例から考える/ライスフェルド真実
【巻末オピニオン】
・高市早苗と「大転換」 「公平で公正な日本」を導くために/浜崎洋介
【書評】
・『未完の名宰相 松平定信』大場一央 著/小野耕資
・『最後の異端者 評伝 美輪明宏』平坂純一 著/山田陣之祐
・『移民/難民の法哲学 ナショナリズムに向き合う』横濱竜也 著/粕谷文昭
・『戦中派 死の淵に立たされた青春とその後』前田啓介 著/髙橋直也
【その他】
・中国の「ポストトゥルース」に毅然と対抗せよ/「解散選挙」なくして、真の「大転換」無し(鳥兜)
・移民問題に見る自民党リベラルの「悪あがき」/高市台湾有事発言「問題」はオールドメディアの偏向報道の帰結である/「核シェルター」の整備を急げ(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)

【特集】
この国は「移民」に耐えられるのか?─脱・移民の思想
【巻頭言】
先の参院選でも最重要争点に躍り出た「移民問題」。実際、その選挙の結果として過剰な移民受け入れの抑制を主張する参政党が大躍進した一方、財界の要請を受けて移民拡大策をひたすら推進し続けた与党自民党が大敗した。
自民党が移民拡大を進めたのは今日深刻化しつつある「労働力不足」を補うためだが、リベラリズムやグローバリズムの思想の敷行が移民拡大を後押ししていることも否定できない。しかし移民拡大は、欧米各国が既にそうした問題を十二分以上に経験しているように、賃金下落や行政コストの肥大化、各種の文化的摩擦やコミュニティの分断、社会的秩序の劣化や治安の悪化をもたらしている。
本特集ではこうした認識の下、リアルな問題を軽視するリベラル思想やグローバリズム思想を背景とした労働力不足を補うための「移民」拡大を多角的に徹底検証し、その打開策を考えんとするものである。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
【特集座談会】
・日本にとって必要な移民政策とは何か?/内田 樹×藤井 聡×柴山桂太
【特別対談】
・「ウィーブ」は日本に何をもたらすのか?/ノア・スミス×藤井 聡
【特集論考】
・「移民問題」の構造/藤井聡
・移民問題を考えるための覚書──フランスを参照して/堀 茂樹
・グローバリズムの失敗を反省し、まっとうな国づくり路線に回帰せよ!/施 光恒
・「移民」に耐えうる社会システムの構築へ/小﨑敏男
・英国の移民受け入れ拡大は間違いだった──私が現地で体験したこと/高尾慶子
・もう一つの外国人問題──日本国が抱えている最も深刻な外国人問題は移民問題ではない/ジェイソン・モーガン
・移民受入拡大は国家破滅への道/室伏謙一
・「脱・移民」とは何かー新自由主義とその「反動」を乗り越える道/白川俊介
・地方自治体と外国籍住民──民主主義と国民国家を護るために/金子宗德
【特別鼎談】
アジアの新世紀 彷徨うアジアの知と帝国再編(後編)/内田 樹×中田 考×山本 直輝
【生誕100年特別連載】
三島由紀夫とは誰だったのか 第5回 三島が遺した「神話」と「革命」(後編)/執行草舟×富岡幸一郎
【連載】
・「過剰医療」の構造と「適正な医療」のかたち 第8回 医療市場の失敗/森田洋之
・アジアの新世紀 虚像の果ての中国 第3回 中国はいかに老いていくのか?──「現代の超克」という危うい試み/高口康太
・「危機感のない日本」の危機 ガソリンの暫定税率減税/大石久和
・虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー 第40回 マルクスの亡霊たち 日本人の「一神教」理解の問題点(11)/富岡幸一郎
・満洲こぼれ話 第2回 日本革新の実験場/小幡 敏
・「農」を語る 第1回 国民が知らない農協の役割とは?/久保田治己×藤井 聡
・輿那覇潤連続対談 在野の「知」を歩く 第8回 転んで進む学問のすすめ(後編)/ゲスト 荒木優太
・日本のアンチモダン 第7回 悲観主義(1) 「サヨナラだけが人生なのか」寺山修司/平坂純一
・東京ブレンバスター20 葬送の選択/但馬オサム
・編集長クライテリア日記 令和7年8月~9月/藤井 聡
リレー連載 映画とわたし 第4回 喜びも悲しみも幾年月──淡々と描かれる時代と人生/川端祐一郎
【寄稿】
・「意気地」の忘却の果てに──「男らしさ」の復権を期して/伽湊綜太郎
・平泉澄が説いた「歴史」と「人格」を読み直す──バーク、マイネッケに学んだ欧行/小野耕資
【巻末オピニオン】
・国家主義(ステイティズム)の時代──単なる反グローバリズムの先にあるもの/柴山桂太
【書評】
・『日本人の「作法」 その高貴さと卑小さについて』浜崎洋介 著/山田陣之祐
・『柳田國男の名著を読む 変革と保守の民俗学』小野耕資 著/粕谷文昭
・『国会改革の「失われた30年」』大山礼子 著/早瀬善彦
・『孤独と人生 幸福について』ショーペンハウアー 著/髙橋直也
【その他】
・「リベラリズム」の成れの果て 「移民」に抵抗できない自己喪失者たち/外国人の犯罪や迷惑行為は「過大評価」されているおか?(鳥兜)
・参政党の躍進をどう捉えるか/安楽死問題に現れる文明の成熟度/河合隼雄「中空構造日本の危機」から読む自民党総裁選(保守放談)
・塾生のページ
・読者からの手紙(投稿)