
☆巻頭言
日本は今、あらゆる側面において衰弱し続けており、国家として没落の一途を辿っている。
その背後には政界は言うに及ばず、官界、学界、マスメディア、教育界、財界、そして、
言論界における激しい腐敗がある。
しかし、世間を見回せば、市井にはまだまだ「立派」に生きる「庶民」があらゆる分野、
階級に息づいている。
絶望的なこの日本にあって、これは一縷の希望である。
おそらくは日本人は「適切な文脈」にさえ置かれればその優秀さを存分に発揮し、驚くべき
能力を見せる力を未だに携えているのではないか。そしてよくよく考えてみれば、日本文化に
おける重要な位置づけを担う茶道、華道、武士道における「道」という概念は、かつての日本人
がその「適切な文脈」として用意したものだったのではないか。
本特集では、ほぼ絶望しか見出し得ない現代日本においてあえて絶望から脱却し得る未来を
構想することを企図し、「道」や「研鑽」の概念を手掛かりとしながら、日本人の「強み」とは
何かを深く考える。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●目次
☆【特集】日本の「強さ」とは何か――亡国を救う「道」の思想
〔座談会〕
・日本復活を導く「道の思想」/施 光恒×藤井 聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
〔対談〕
・「道」を極めることは「良く生きること」――東京五輪、女子柔道大復活の秘密/中井祐樹×松原隆一郎
・日本再生の鍵は職人の伝統にあり――“棟梁”小川三夫氏に聞く/小川三夫(聞き手 柴山桂太)
・「道」は日本人の故郷である/菅野覚明
・稽古の智慧――世阿弥に学ぶ/西平 直
・継承という事――「梅路見鸞」という存在/甲野善紀
・本来的な日本の強みとしての「任?」を考える/宮崎 学
☆【新連載】
〔特別対談〕プライマリーバランス規律を撤廃せよ!
・第1回 安倍内閣はなぜ消費増税したのか?(田原総一朗×藤井 聡)
・「自己喪失」の近代史 第一回 「明治の精神」は、どう終わっていったのか/浜崎洋介
☆【特別レポート】
〔対論〕「空気」に屈しない!「歯科」的抵抗運動/松崎友祐×七里正昭
☆【連載】
・「危機感のない日本」の危機――日本国崩壊の真因・小選挙区制の導入/大石久和
・欧米保守思想に関するエッセイ 第5回 孤高の哲人、アーヴィング・バビット Part? バビットの教育政策論争/伊藤貫
・マルクスの亡霊たち――マルクス主義とキリスト教?/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー)
・「社交の世紀」の光と影/川端祐一郎(思想と科学の間で)
・ポストモダン紋切型辞典/平坂純一(保守のためのポストモダン講座)
・ワクチン報道への疑問/松林 薫(逆張りのメディア論)
・「政治」と「感情」マーサ・ヌスバウムのコスモポリタニズムからの「後退」をめぐって――愛着と忠誠の政治哲学序説/白川俊介(ナショナリズム再考)
・地形と気象が生んだ中部モノづくり――情報と閉じこもり/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
・向田邦子と日本の「甘え」――言葉から考える?/施光恒(やわらか日本文化論)
・待つことが目的と化した人生の行方――『ゴドーを待ちながら』を読む/仁平千香子(移動の文学)
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・メディア出演瓦版/平坂純一
☆【書評】
『西部邁が支持したアメリカ映画論』寺脇 研 著/田中孝太郎
『歴史なき時代に 私たちが失ったもの 取り戻すもの』與那覇 潤 著/前田龍之祐
『日本的思考の原型 民俗学の視角』高取正男 著/篠崎奏平
☆【その他】
・読者からの手紙
・〈いのち〉を失くした「大学」に送る/タリバンの原理主義と欧米の独善(鳥兜)
・自民は古い緊縮改革路線からの転換は果たせるのか/「官邸主導」という名の独善政治(保守放談)
☆巻頭言
◇【特集1】日本人の死生観を問う
多くの国民に感染死をイメージさせたこの度のコロナ禍は、日本人に「死」の問題を改めて向き合う機会を半ば強制的に与えた。
結果、多くの人々は慌てふためき、過剰とも言える反応に終始した。
これはつまり、日本人において「死」の問題に向き合う機会が年々失われつつある事を、
すなわち「死」の裏側にある「生」とは何かを真剣に問う機会および精神そのものが蒸発しつつある事を改めて明らかにするものであった。
日本人の今日の目を覆うばかりの精神的頽廃の背後には、まさにこうした死生観の急速かつ著しい劣化が潜んでいることは間違いない。
本特集ではこうした認識の下、我が国の再生の縁を見い出す事を企図し、日本の伝統的な死生観を見つめ直しつつ、
今日の我が国の死生観の有り様を改めて問い直さんとするものである。
◇【特集2】保守からの近代日本批判 大東亜戦争への道
8月15日、終戦記念日と呼ばれるこの日が近づくとメディア各社は「太平洋戦争」を振り返り、
戦前を断罪する東京裁判史観に立った戦後レジームの維持・強化に大いに貢献してきた。
一方で我が国には、そうした風潮に異を唱え、大東亜戦争にも日本の大義があったと主張する「保守」勢力が存在し、
平成後期にはそれが世論において一気に拡大する情勢となった。
しかし、こうした「保守」の立場に立ってもなお、戦中戦前の近代日本のあり様を批判することは可能である、というよりもむしろ必要である。
そもそも保守であるからこそサヨクよりもより適切でしかも建設的な徹底批判が可能であるに違いないからだ。
本特集では、ホシュによる日本全肯定はサヨクによる全否定と同様に愚かな思考停止に過ぎぬとの前提の下、
大東亜戦争への道そのものに内在する欺瞞や虚無に焦点を合わせ、
保守の立場からあえて戦前戦中の近代日本批判を多面的に論ずるものである。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●目次
◇【特集1】日本人の死生観を問う
[対談]
死を考えることは大衆社会への問い――国語と共同体の崩壊が導く悪夢/呉智英×藤井聡
生命至上主義という名の権威主義――人を物と見なす現代医学/和田秀樹×藤井聡
死生観を歪めた医療ビジネス主義――国民が知らない医療界の「常識」/森田洋之×藤井聡
・草葉の陰のちゝろ虫――ニヒリズムとアニミズム/井口時男
・「死」を信じるということ――森鴎外に倣って/浜崎洋介
・死と生をめぐる判断と意思決定――コロナ禍を一例として/竹村和久
・祖霊を感じる心――死者と生者の交流の民俗/中尾聡史
◇【特集2】保守からの近代日本批判 大東亜戦争への道
[座談会]
日本を取り戻す、その鍵は「武士道」にあり/前田日明×藤井聡×浜崎洋介
近代日本人の「弱さ」を問う――保守からの「大東亜戦争」再考/富岡幸一郎×中島岳志×浜崎洋介
・日本、敗れたり/小幡敏
☆【特別インタビュー】
続 養老孟司、「常識」を語る――「自足」することと、「自立」すること/聞き手 浜崎洋介
江田憲司・立憲民主党代表代行に聞く――分配なくして成長なし! 一億総中流社会の復活を! /聞き手 及川健二
☆【連載】
・「危機感のない日本」の危機――「ワクチン敗戦」などではない/大石久和
・欧米保守思想に関するエッセイ 第4回 孤高の哲人、アーヴィング・バビット Part1/伊藤貫
・郷愁(ノスタルジア)について――近代のもう一つの側面/柴山桂太(「常識【コモンセンス】」を考える)
・マルクスの亡霊たち――マルクス主義とキリスト教1/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー)
・小さきモノへの愛 その2――地形が生んだ将棋地形が生んだ将棋/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
・反出生主義 死者と生者の間に/平坂純一(保守のためのポストモダン講座)
・啓蒙と野蛮の間――死刑制度をいかに語るか/川端祐一郎(思想と科学の間で)
・コロナ自粛論争の「敗因」を考える/松林 薫(逆張りのメディア論)
・「コスモポリタン=コミュニタリアン論争」再考――コスモポリタニズム批判8/白川俊介(ナショナリズム再考)
・カタカナ語乱用と英語化現象 自己満足よりも正確な伝達を――言葉から考える9/施光恒(やわらか日本文化論)
・辿りつけない故郷と日本への憎悪/仁平千香子(移動の文学)
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・メディア出演瓦版/平坂純一
☆【書評】
『死生論』西部邁 著/前田龍之祐
『「がんになって良かった」と言いたい』山口雄也・木内岳志 著/高平伸暁
『「ポスト・アメリカニズム」の世紀 転換期のキリスト教文明』藤本龍児 著/田中孝太郎
『第三の精神医学 人間学が癒やす身体・魂・霊』濱田秀伯 著/篠崎奏平
☆【その他】
・読者からの手紙
・五輪開会式に見る日本の田舎者根性/SNS時代の「人民裁判」(鳥兜)

☆巻頭言
コロナ禍対策で世界各国は今、狂ったように国債発行し、政府支出を拡大している中、
我が国日本は「孫子にツケ=借金を残すような『無責任』な事をしてはならぬ」とのかけ声の下、
政府支出拡大が中途半端な緊縮的水準に留まっている。
しかし、世界各国は、現下の大不況を放置することこそが『無責任』であり、現下の国民のみならず孫子の代の暮らし考えても、
今こそ「中央銀行」の力をフル活用し、徹底的に政府支出を拡大することが求められていると認識、実践している。
つまり我が国一国が、この経済危機に対処するという『責任』を果たしてはいないのである。
かくしていま求められているのは、現代経済システムにおける「中央銀行」という存在の強力な威力を認識し、
それを踏まえたうえで孫子のために財政を徹底拡大する事を措いて他にない。
こうした認識に立つ本特集が、日本財政が正気を取り戻す一助となることを祈念したい。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●目次
☆【特集1】孫子のための「財政論」 中央銀行の政治学
(対談)
ケインズ革命を加速せよ! ――中央銀行のプラグマティズム/浅田統一郎×藤井聡
コロナ禍から資本主義の「その先」へ/大澤真幸×柴山桂太
・「選択的な財政支出」が日本経済を救う――成長政策・社会保障財源としての財政出動・金融緩和/飯田泰之
・いまこそ将来世代のための政策を掲げよ/森永康平
・国家の信用はどのようにして生まれてくるのか?/仲正昌樹
・現代的貨幣理論による財政学のアップデートは可能か?/佐藤一光
・貨幣史、国家、中央銀行、そしてその先へ/望月慎
・イデオロギーとしての「中央銀行の独立性」――ニュー・コンセンサスとMMTを比較する/金濱裕
☆【特集2】コロナがもたらす教育破壊
(対談)
「若者の未来」は守れるのか? ――社会学からの処方箋/宮台真司×藤井聡
・〈われ―なんじ〉の教育論――大学の死をめぐって/浜崎洋介
・コロナで加速した学校現場の混乱――高等学校からの報告/清水一雄
・一教師のコロナ禍体験記――マスク着用が当たり前になった学校で/?江啓祐
☆【特別インタビュー】
続 養老孟司、「常識」を語る――「不気味なもの」との付き合い方 コロナ・虫・解剖学/聞き手 浜崎洋介
☆【連載】
(連載対談)
・永田町、その「政」の思想(第4回)安倍・菅内閣の官邸システムの本質/佐藤優×藤井聡
・「危機感のない日本」の危機――メディアと日本の目を覆うべき転落のコラボ/大石久和
・欧米保守思想に関するエッセイ 第3回 ソルジェニツィン Part3/伊藤貫
・マルクスの亡霊たち――思想に殺された作家たち2/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー)
・小さきモノへの愛 その?――日本人の原点/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
・福田和也――思想の揺らぎについて/平坂純一(保守のためのポストモダン講座)
・居場所は法の外に――日米暴走族の「自治」のエートス/川端祐一郎(思想と科学の間で)
・オオカミ少年と警鐘の倫理/松林 薫(逆張りのメディア論)
・移動の自由がもたらす「リベラル・ディストピア」――「移動せずともよい社会」を目指して?/白川俊介(ナショナリズム再考)
・「ポリティカル・コレクトネス」は多様性をもたらすのか? ――言葉から考える8/施光恒(やわらか日本文化論)
・伝統の価値――満州から独りで帰ってきた少年の話/仁平千香子(移動の文学)
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・メディア出演瓦版/平坂純一
☆【書評】
『危機の日本史 近代日本150年を読み解く』佐藤 優・富岡幸一郎 著/前田龍之祐
『デヴィッド・ボウイ 無(ナシング)を歌った男』田中 純 著/田中孝太郎
『フィヒテ入門講義』ヴィルヘルム・G・ヤコプス 著/篠崎奏平
『計算する生命』森田真生 著/薄井大澄
『ベートーヴェンは怒っている! 闘う音楽家の言葉』野口剛夫 著/加藤真人
☆【その他】
・表現者クライテリオン信州・松本シンポジウム報告
・読者からの手紙
・「脱炭素化」の幻想「/コロナ全体主義」の心理学――エーリッヒ・フロムに倣って(鳥兜)
・基準なき国の、基準なき政府――宣言延長と五輪開催/キルケゴールとコロナ危機――〈絶望=不協和〉に喘ぐ日本人(保守放談)
☆巻頭言
昨年から始まった「コロナ騒動」。第二波、第三波、そしてこの度の第四波と新型コロナウイルスの感染拡大の波が訪れる度に、政府も国民も慌てふためき、自粛だ時短だ緊急事態だと騒ぎ立ててきた。
そうした騒ぎを扇動したのが「コロナは怖い自粛しろ」という意見が政治的に正しい、すなわち「ポリティカル・コネクトネス」(ポリコレ)だという強固な認識だった。
しかしそれはあくまでもタテマエであり、コロナ騒動を繰り返す内に、世間の人々のホンネはコロナは当初危惧したほどに恐ろしいものではないというものに徐々に変遷していった。つまり人々はコロナに「慣れて」いったのである。
結果、コロナを巡るホンネはタテマエと大きく乖離し、それに伴い人々の間に「コロナ疲れ」が蔓延するに至った。
そのコロナ疲れはもちろん精神的なものであると同時に、社会的・経済的疲弊を意味するものであった。
私達はこの急激に肥大化しつつある「コロナ疲れ」に適切に対処することが出来るのだろうか?
是非、本特集を通して読者各位に、その方途をご吟味いただきたい。
表現者クライテリオン編集長藤井 聡
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●目次
☆【特集】コロナ疲れの正体――暴走するポリコレ
・(座談会)知識人は「ポリコレ」にどう向き合うべきか――「保守」と「リベラル」の対話を通じて/東浩紀×辻田真佐憲×藤井聡×浜崎洋介
・(鼎談)なぜ日本では「自粛」が“政治的に正しい"のか――コロナ禍中の思考停止について/三浦瑠麗×宮崎哲弥×藤井聡
・(インタビュー)「コロナ依存症」に陥った日本社会をどう癒すか――過剰自粛、ポリコレ、ポスト・トゥルースの時代を超えて/與那覇潤×聞き手浜崎洋介
・(対談)コロナ自粛「腰抜け」論に抗え!/小林よしのり×藤井聡
・アメリカに吹きすさぶポリコレの嵐――民主党の「改造」は何をもたらしたか/会田弘継
・「ポリコレ」について私が知っている二、三の事柄/浜崎洋介
・道徳感情、燃ゆ/綿野恵太
・ポリティカル・コレクトネスの何が問題か――アメリカ社会にみる理性の後退/ベンジャミン・クリッツァー
・社会に蔓延る「ポリコレ」――その心理的背景/加藤真人
☆【連載対談】
・永田町、その「政」の思想(第3回)大衆社会と如何に対峙するか/佐藤優×藤井聡
・大変動期を語る(後編)資本主義の地殻変動/鎌田浩毅×柴山桂太
☆【連載】
・「先進国で日本だけが」ばかりの日本国/大石久和(「危機感のない日本」の危機)
・欧米保守思想に関するエッセイ第2回 ソルジェニツィン Part2/伊藤寛
・SNSがもたらす「沈黙の二重螺旋」/松林 薫(逆張りのメディア論)
・マルクスの亡霊たち――思想に殺された作家たち1/富岡幸一郎(虚構と言語戦後日本文学のアルケオロジー)
・災害で進化する都市/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
・早稲田に直己先生がいた時代/平坂純一(保守のためのポストモダン講座)
・菜食主義を考える――倫理はいかにして成熟するのか/川端祐一郎(思想と科学の間で)
・「領土」について政治哲学的に考える――コスモポリタニズム批判?/白川俊介(ナショナリズム再考)
・帰らなかった日本人妻たち――慶州ナザレ園にて/仁平千香子(移動の文学)
・「英語化が経済成長を促す」は本当だろうか? ――言葉から考える7/施光恒(やわらか日本文化論)
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・メディア出演瓦版/平坂純一
☆【寄稿】
ゲルニカとカサブランカ/橋本由美
☆【書評】
『農の原理の史的研究 「農学栄えて農業亡ぶ」再考』藤原辰史 著/田中孝太郎
『財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生』ステファニー・ケルトン 著/金濱裕
『新たな極右主義の諸側面』テーオドル・アドルノ 著/前田龍之祐
『ヨーロッパ冷戦史』山本健 著/篠崎奏平
『金子兜太 俳句を生きた表現者』井口時男 著/薄井大澄
『小津安二郎への旅 魂の「無」を探して』伊良子序 著/玉置文弥
☆【その他】
・表現者賞・奨励賞発表
・スガノミクスが地方を滅ぼす/お為ごかし徹底批判のための真摯な勇気を(鳥兜)
・死ぬ機会の「ジェンダー・ギャップ」/選択的夫婦別姓論の短絡(保守放談)
・読者からの手紙
☆巻頭言
コロナ禍の中で、日米欧の没落が激しく加速している中、「一人勝ち」の中国の存在感は一気に拡大し、
2028年にはGDPがアメリカを追い抜くという観測も出始めた。このままなら香港のみならず早晩、
台湾・尖閣を飲み込みかねない勢いだ。
事ここに至れば、我が国は冊封体制から抜け出すことに成功した古代日本と同じく、これまでのような侮蔑の念を軸とした単なる嫌中的態度を打ち捨て、
虚心坦懐この状況を見て取り、中国の強大さを過不足なく認識した上で「中国に抗う」姿勢を鮮明に打ち出す他ない。
それができねば我が国日本は米国からのみならず中国からも独立を勝ち取ることはできなくなる。
すなわち我が国は今、アメリカのみならず中国もまたもう一つの我が国と隣接した「超大国」であると見定め、
侮ることなく、まして媚びへつらい付き従うことない「レジスタンス」の姿勢を保ち続ける覚悟を持たねばならないのである。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
●目次
☆【特集1】抗中論 超大国へのレジスタンス
・(座談会)「中国の夢」という脅威/福島香織×藤井聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・(対談)東アジアの中国と日本(前半)中国を知らない日本人/岡本隆司×藤井聡
・まずは尖閣を死守せよ――“縮小の時代"にふさわしい日本外交とは?/近藤大介
・世界の豚肉の半分を食べる国――生産の半分が失わせて見えた食料事情/岩田寛史
・中国はなぜ情報通信ネットワークの掌握を狙うのか/小原凡司
・ディスインフォメーション・キャンペーンを仕掛ける中国――日本への影響をどう抑え込むか/?原響子
・親中の何が悪い――理念なき国家の“敗北"/小幡敏
☆【特集2】コロナが導く社会崩壊
・(座談会)「国民の幸福」の最大化をめざせ――“自粛か経済か"の不毛/藤井聡×柴山桂太×浜崎洋介×川端祐一郎
・非正規労働者を見捨てるな! ――1000件のSOSが訴えるこの国の窮状/雨宮処凛
・コロナを過大視する日本人の心理の背景とその悪影響/和田秀樹
・“自粛強要"で経済を壊すな――緊急事態に陥る“社会の底辺"/鈴木傾城
・コロナ禍中の感情過多と過剰倫理/川端祐一郎
☆【連載対談】
・大変動期を語る(前編)資本主義の地殻変動/鎌田浩毅×柴山桂太
・永田町、その「政」の思想(第2回)「亡国」を巡る思想と実践/佐藤 優×藤井 聡
☆【新連載】
・欧米保守思想に関するエッセイ 第1回 ソルジェニツィン Part1/伊藤寛
☆【連載】
・財政制度等審議会の理解力/大石久和(「危機感のない日本」の危機)
・種苗法改正の何か問題なのか? ――農家の視点から考える/松平尚也(農は国の本なり)
・なぜ中国はコロナ対策に「成功」したのか/松林 薫(逆張りのメディア論)
・宗教原理主義の預言書『邪宗門』/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー)
・妄りな非本質主義 ミシェル・フーコー/平坂純一(保守のためのポストモダン講座)
・移動の自由がもたらす「リベラル・ディストピア」――「移動せずともよい社会」を目指して(三)コスモポリタニズム批判?/白川俊介(ナショナリズム再考)
・江戸のハードインフラを守る文化というソフト――日本堤と隅田堤の物語/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
・編集長クライテリア日記/藤井聡
・メディア出演瓦版/平坂純一
☆【寄稿】
《ダウントン・アビー》にみるサムウェア族的価値観とブレグジット/佐藤慶治
☆【書評】
『私の人間論 福田恆存 覚書』福田恆存 著/薄井大澄
『感染症と民衆 明治日本のコレラ体験』奥武則 著/篠崎奏平
『想像力「最高に高揚した気分にある理性」の思想史』メアリー・ウォーノック 著/酒井佑陶
☆【その他】
・バイデン大統領誕生に際して――問われる戦後の「JAP.COM」/ 社会崩壊の兆し――「自殺」というもう一つの感染症(鳥兜)
・脱炭素より脱貧困を/ コロナ騒動と「常識」の死滅(保守放談)
・読者からの手紙
☆巻頭言
安倍総理の後任として総理の座を射止めた菅義偉氏。世間は約八年ぶりの新総理誕生を大いに歓迎した。
東北出身であることや無派閥であること等が、その「令和おじさん」の総理就任の歓迎ムードをもり立てた。
ただし、日本が置かれた現実は今、戦慄を覚える深刻な状況にある。長引くデフレ不況下で襲来したコロナ禍、
米国では新大統領が誕生する中、そのコロナ禍で一人勝ち状況にある隣国中国はその覇権的野心をさらに激化させている。
こうした状況下では総理の差配は日本の命運に文字通り直結する。
本誌ではこうした認識の下、日本の命運を握る人物となった「菅義偉」という人物が一体如何なる政治家なのか、
そして彼はこの政権で一体如何なる政治を行おうとしているのかを、支持や批難の枠を超えて多角的、多面的に論ずる特集「菅義偉論」を企画した。
彼が言う「改革」は国益に適うものなのか、それとも単なる破壊に終わるのか
――読者各位が是非、じっくりとご吟味願いたい。
表現者クライテリオン編集長 藤井 聡
--------------------------------------------------------------------------------------------
☆特集 菅義偉論――改革者か、破壊者か
☆【連載対談】
◇永田町、その「政」の思想(第1回)「菅政権」システム論/佐藤 優×藤井 聡
☆【編集長インタビュー】
◇古賀誠氏に聞く――「菅改革」は保守たり得るのか?
◆亀井静香氏に聞く――菅義偉 自ら光を出せない「月の政治家」
◇政治記者・鈴木棟一氏に聞く――「改革者」菅義偉の源流
☆【特集論考】
◇菅義偉は力ずくの政治を改めなければ破壊者になる/森田 実
◆菅政権は半グレ政権――欠陥だらけの権力者の運命はいかに/佐高 信
◇「菅義偉」とは誰なのか――故郷喪失者のルサンチマンについて/浜崎洋介
◆理念より実利優先の超現実主義者――改革志向の原点は「エリート」への反発/泉 宏
◇中抜きの宰相? ――政治家・菅義偉考/與那覇 潤
◆菅首相を保守の友とすることはできない/中島岳志
☆【新連載】
◇保守のためのポストモダン講座(第1回)西部邁とポストモダン/平坂純一
☆【連載】
◇基本法を改正できない危機/大石久和(「危機感のない日本」の危機)
◆アベノミクスを振り返り、スガノミクスに願うこと/森永康平(アベノミクスの失敗)
◇保守派III――「覇権による安定」理論/伊藤 貫(国際政治学のパラダイム)
◆三島由紀夫「私の中の二十五年」を読む/富岡幸一郎(虚構と言語 戦後日本文学のアルケオロジー)
◇宗教や戦争は自殺を減らすのか――?デュルケムの誤認と慧眼/川端祐一郎(思想と科学の間で)
◆郷愁と伝統/柴山桂太(「常識【コモンセンス】」を考える)
◇移動の自由がもたらす「リベラル・ディストピア」――「移動せずともよい社会」を目指して(三)コスモポリタニズム批判?/白川俊介(ナショナリズム再考)
◆国民の分断と言語教育――言葉から考える6/施 光恒(やわらか日本文化論)
◇戦国のアウトバーン――日本最初の運河・小名木川の謎/竹村公太郎(地形がつくる日本の歴史)
◆記憶なき場所に故郷を探す――小林勝の「フォード・一九二七年」を読む/仁平千香子(移動の文学)
◇マスコミが「保守」になり得ないわけ/松林 薫(逆張りのメディア論)
◆“生きたい"と“死にたくない"――我々の国は、私の国/磯邉精僊(自衛官とは何者か)
◇日本の政府と財界は、フランスの移民政策の失敗に学ぶべし/ブルーノ=ゴルニッシュ国民連合・前全国代表(後半)聞き手:及川健二(フランス保守論客インタビュー)
◆メディア出演瓦版/平坂純一
◇編集長クライテリア日記――令和二年九月~十一月/藤井聡
☆【書評】
◇『三島由紀夫 なぜ、死んでみせねばならなかったのか』浜崎洋介 著/磯邉精僊
◆『自衛隊は市街戦を戦えるか』二見 龍 著/篠崎奏平
◇『愛するということ』エーリッヒ・フロム 著/薄井大澄
◆『ベートーヴェン 巨匠への道』門馬直美 著/佐藤慶治
☆【その他】
◇領土を奪われる幼児国家日本「/遊び」を罰するな(鳥兜)
◆RCEPは誰のための協定なのか/滅びゆく日本――三島由紀夫没後五十年に思う(保守放談)
◇読者からの手紙(投稿)